[Reading] in the Land of Languages : カジュアルな人口言語探訪

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言語学、認知心理学、の研究者による、人工言語ガイドといった内容の異色の書。 手を変え人を変え連綿続く、人工言語の野心と挫折を含んだ歴史、そして現状に光を当てている。 MindHacksPerformanceなんかを読んで、ロジバンやクリンゴンに興味もった人などには、文句なくオススメ。

こと人口言語の作り手と聞くと、言語に対して執拗なこだわりを持ち、どこか狂信的な論理を持った孤独な人間をイメージが思い浮かぶ。 そしてこの著者についてだが、その人自身、言語マニアだ。数々の言語を操れるらしい。 生まれはアメリカであり、そのアメリカはモノリンガル大国である。 そんな国でポーリーグロットであることは欧州に比べれば珍しいであろうし、 また使用可能言語にハンガリー語・アメリカ式手話も含まれる辺り、 単なる同類言語ポーリーグロットではないことが想像できる。 さらには、どうやらしっかりクリンゴン語の認定試験もパスしているようだ。(どんな試験で誰が作ってるんだ?)

17世紀のウィルキンスによる普遍言語から始まり また、各話者/人工言語作成者へのインタビュー、図形言語についても網羅、そして自身で学習した体験など 盛り込まれている点がユニークだ。
無味感想になりがちな同種のテーマの本の中で異彩を放つ。 実体験を元にした話をジャーナリストとしての腕前ももって料理しており、読んでいて飽きさせない。

  • intelingua話者の嘆き
  • ロジバン・コミュニティへいったら結局ほとんど英語で話していた
  • クリンゴン話者大会への突撃参加

などなど、なかなか見えづらい人工言語話者間の実態がかいま見え、 ましてや日本ではほぼ見る事が出来ないエピソードを作り上げており、 基調な読書体験が得られると言えそうだ。

決して体系だてられた本ではないのだけれどね。 著者自身楽しみ過ぎていることもあり、かなりかけ足で自由なガイドになっている。 また、米Amazonのレビューに少々見られるように、しっかりした背景知識をもった人間からしたら、 記載している歴史等に不足・不適切さがあるようだ。 ただそれも悪影響をもたらす程ではないと思う。 著者と共に探訪を楽しむのが本書のいい読み方じゃないかな。

英語はリズムが良く、単純に読みやすい。 この手の言語学関連の本に想像しがちな、馴染みのない単語を連発して自身の曖昧な考えを一方的に語る といった内容にはなっておらず、どんな読み手を想定しているかをよく考えていることが見受けられる。

それで話はそれるのだけど、多言語を話す人間の書く英語は非常に読みやすい気がする。 いわゆる、ポーリーグロットと呼ばれている、何カ国語も、もっと言えば何十ヶ国語も話すような人たちの書く 文章は、論理が透き通っているような感覚で読める。どこかメタ言語的というかかなり適当な言葉を用いているが不思議な読みやすさだ。

しかし、ロジバンはもう少し話題になりそうでならないよな〜。

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